JPDA全国会議2012四国

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内子で開催された日本パッケージデザイン協会(JPDA)の全国会議へ行ってきました。

本来はJPDA会員間の交流を目的として、会員が参加費を払って参加するものですが、
愛大農学部の客員教授で、デザイナーで、今回のイベントをディレクションしている
山内敏功先生が、地元との交流、教育を目的として、招待していただきました。
敏功先生は地域マネジメントスキル修得講座でお世話になっております。

良いデザインはデザイナーだけで完結するものではなく、
デザイニスト="デザインを利用する人"との良い関係の構築によりなされる、
という敏功先生の素晴らしい哲学ゆえの粋な計らいに感謝。

パッケージデザインについては専門外で自分が目指すところではないけれど、
デザインが社会に果たす役割、地域づくりで果たす役割について、
大いに学ぶことができた、ここ最近で経験した中でも最も良いイベントでした。
...僕にとっては。


四国にも良いデザイナーはいるんだなあ。


会場は内子座。

内子座自体が良い空間なのですが、
その空間をデザイナーがより上手に使っているように感じました。

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元々ある空間の素地なのか、デザイナーによる演出なのか、
その区別が明確にならないくらい、空間の演出が空間に溶け込んでいる。
良いデザイン、良い空間づくりとはこういうことなんだなあ。


弓道の演武によりスタート。

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基調講演は編集工学研究所所長の松岡正剛氏。
お題は「型と間ー日本のデザインと編集」。

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例によって勉強不足で今回はじめて知った人なんですが、
いやあ、存在感が半端ない。
噂では「怪物」って聞いていたので、
どんだけ迫力ある人なんだろ、と思ってたら、
見た目もしゃべりも非常にスマート。
しかし言葉に力がある。

それはただ「博識」というものではなく、
言葉が本来持っている力とでもいうべきものを引き出している、みたいな。


日本の空間は境界があいまい、というおはなし。

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日本の家屋の軒や庇、縁側などは外部であり、内部でもある。
内が外であり、外が内である。
四方を壁で囲む「四囲」方式の諸外国とは異なる独特の文化。
自然からの隔絶ではなく、自然とつながっていながら独特の社会を形成していく。
自然と社会の間に絶妙な「間(space)」を生む。
対象(型)と対象(型)の間に間を生む。
間は型と型をつなぎ、型は間と間をつなぐ。
境界の「ぼかし」はものごとをダイレクトに表現しない、
周囲の要因を使った遠まわし的な、多様な表現。
そこが日本の魅力なのに、
現代社会は合理性という即効性を最も重視した西洋の文化に毒され過ぎちゃいないか。


時には座って話したり。

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話だけでなく、何気ない所作も様になるんだなあ。


表と裏のおはなし。

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型はどのようにして作られ、進化していくのか。
そのキーワードとして出てくるのがリバース(反転)。
たい焼きがたい焼きの型からできるように。
型は内と外、表と裏が反転を繰り返して発展してゆく。
表は常に表なのではなく、裏は常に裏なのではない。
そこには永遠の諸行無常観がある。


うつ(空)→うつろひ(移ろい)→うつつ(現)への変化。

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ボイドから、実体が生じるという不思議。
空間は「なにもない」場所ではなく、「ぼかされた」空間。
そこから何かを写しとり、映しとり、移しとることで実体化する。
それがデザインという所作なのか。


究極のカーブのおはなし。

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数式で表現できない曲線。
それが日本の線。
西洋の線は、数式で表現できる。
幾何であり、オーガニックである。

これまでは人間らしい造形を求めながら、幾何にこだわりすぎていた気がします。
人間の構成原子が幾何であることは確かだけれど、そこに「間」という
エッセンスが加えられてはじめて人間らしくなる。

ユスモクで使用する木材の多くは曲がっているものが多く、
多くの曲材からまっすぐなものを探し出すことに執心していた。
本来はこの「曲がり」を上手く活用すべきなのではないか。
そこに現在の行き詰まり感がある気がします。


続いてパネルディスカッション。
内子町長☓山内敏功☓梅原真。

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はじめて生梅原さんを見ました。
こちらもなかなか面白い内容でした。

デザインは現場でなされなければならない、という哲学。
なぜ、今田舎でデザインなのか。
日本ではまだまだ「デザイン」という職能が認知されていない現実。

美大でデザインを学んだとき、日本ではまだまだデザインが未熟であることを痛感した。
デザインの教育が「なんとなく」されている現実。

小学校の「図工」の授業を「図工・デ」とする案、おおいに賛成です。

日本は今、まさにデザイン教育を切に必要としている時期ではないでしょうか。


この後懇親会があってすごく行きたかったのですが、
体力も財力もなく、お暇しました。
少し考えを整理する時間もほしかった。


しかし今後の活動に確実に生かせそうな何かを学べた気がします。
いやあお腹いっぱい。