堀木エリ子の世界【そごう心斎橋本店14階ギャラリー】

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[そごう1階にある巨大な円環]


今年初の小旅行。
まずは大阪は心斎橋へ。
心斎橋そごうの14階ギャラリーで開催されている堀木エリ子さんの展示会を
見るためだけに大阪に来たのでした。

横浜そごうで開催されているときに行こう行こうと思いつつ行けなかったので
今回の旅行がてらに行くことにしました。

地下鉄心斎橋駅からそごう1階へ上がっていくと上記の写真のような
巨大な円環が一際目に付きます。


チケット。
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心斎橋そごうのHPから割引券をプリントアウトしていくと、200円割引になります。
学生料金でさらに割引を受けて400円で見れました~


子供の頃、実家ではふすまや障子など僕は和紙に囲まれて生活していた。
東京に出てきて、それらの和紙を見ることは皆無だった。
だから和紙には懐かしさを感じる。伝統を感じる。

和紙ディレクター、堀木エリ子さんが繰り広げる独特の和の世界。
「伝統」は旅人がいずれ帰ってくる場所として存在するのかもしれない。


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[14階ギャラリー入口付近にあるオブジェ]


会場はまず堀木さんのポートフォリオ紹介ではじまります。
会場であるそごう心斎橋店以外にも成田空港ターミナルや六本木ミッドタウンなど
多くの公共施設や商業施設で使われている様が紹介されています。
あわせてビデオで堀木さんが和紙を創りだす工程が紹介されていました。
「和紙ディレクター」という肩書きをもつ堀木さんですが、
このビデオを見ているともはや職人。
クラフトマンシップを大切にするディレクターなんだな、ということが伺えます。


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[地下の吹き抜け空間にあるオブジェ]


ポートフォリオコーナーの次は和紙空間の展示コーナー。
両壁面が和紙で囲まれた廊下を抜けると楕円柱形の部屋へと導かれます。
和紙の質感がかもし出す懐かしさ、
和紙を通して照らし出される橙色のこれまた懐かしさを感じさせる照明。
それらと楕円、卵型という形状があいまって、母親の胎内にいるような気分。
母親の胎内にいたときの記憶なんてないけれど、なんかそんな気がする。

ちょうど今谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を読んでいるのですが。
東洋文化は元々「陰」を基調にそこから美を見出すものだった。
逆に西洋文化は「光」に美を見出すもの。
明治の文明開化以後、積極的に西洋文化を取り入れたことで
陰に美を見出す文化が失われつつあることを谷崎潤一郎は嘆いているわけですが、
これは現在の日本にも当てはまることではないでしょうか。

明るすぎる照明。
それは陰を基調とする美を失うだけでなく、
貴重な地球資源を浪費することにもなっている。
つまりはエコ的にもあまりよろしくないものなのです。


会場はそごうの他の店舗内と比べると若干暗めとなっています。
和紙照明を際立たせる効果をねらってのことでしょうが、
本来照明の明るさはそれくらいで十分なのではないでしょうか。
陰を知ることで光のありがたさを忘れない。
火の色に近い橙色の照明とすることで自然を忘れない。
伝統は本来人間が「いきもの」であることを忘れないために、思い出すために
あるのではないでしょうか。

和紙空間を抜けると、和紙を使った小物類の展示。
照明からウィスキーのラベル、包装紙、梱包箱まで多岐にわたる展示がしてありました。

和紙に樹脂を混合することで従来の平面構成から立体構成を可能にする。
まさに「温故知新」といったところでしょうか。
デザインの原点がそこにある気がします。


ちょっと惜しいなと思ったのは作品に触らせてくれなかったこと。
展示物を傷つけない、という点では展示会では基本的なことですが、
和紙の特長はなんと言ってもあの独特な紙質。
和紙に触れたときのあの心地よさ。
和紙の見た目の質感で「魅せる」のも重要だとは思いますが、
触れさせることでより和紙の魅力をアピールできるのではないでしょうか。

40分ほどで鑑賞を終えて、会場外そばのショップを見る。
図録が用意されていなかったのがとても残念。
6千円くらいの作品集がありましたがそれはちょっと高すぎ。
2,3千円くらいの図録は用意しておいて欲しかったなあ。

そのほか記念品としてはポストカードなどがありましたが、
やはり実際の和紙を使ったものがなかったのが残念。
コスト的に見合わなかったのかなあ。


でもまあ和紙の魅力を十分感じることができた展示会でした~
本展は1/20(日)まで開催されてますので関西の方で興味のある方は
足を運ばれてはいかがでしょうか。

※展覧会は既に終了しております。
なお、そごう心斎橋本店が本展翌年の2009年に閉店、大丸心斎橋店・北館となりました。
14階は劇場になってるみたいですね...


追記: 2009/08/09 YouTubeで動画見つけました~