吉岡徳仁 クリスタライズ【東京都現代美術館】

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せっかく東京にきた、ということで。
東京でやっている最先端のデザイン・アート関連の展示を見に行くことに。

まずは東京都現代美術館で開催中の吉岡徳仁の『クリスタライズ』。

実は彼の展示を見るのはこれで四度目。

2006年にAXISギャラリーで開催された『スーパーファイバーレボリューション』、
2008年に21_21DesignSightで開催された『Second Nature』、
単独展ではないけれど、
2010年に森美術館で開催された『ネイチャー・センス』、

そして、本展。


デザインとアートの中間。吉岡の立ち位置はそこにある。デザインは設計できるが、アートは設計できない。デザインは心理学的だが、アートは精神分析的である。デザインの前提は「複製」だ。いっぽうアートの前提は常に「複製への抵抗」である。(本展図録P170、斎藤環「デザインの意志」)


この記述に概ね反論はないけれど、
僕が彼の好きな部分はアーティストとしての側面である。
とくに素材の特性を生かした空間づくり。
そこに感動させられるし、自分もそのような空間づくりをしてみたいと思う。

本展のタイトルのとおり、本展で使われているマテリアルは
ガラスやアクリル、クリスタル、プラスチックといった透明感のあるもの。
自分が現在使おうとしている木とはまったく性質の異なるものではあるけれど、
素材の特性の引き出し方、空間表現への使い方を学ぶ、という点においては、
使われるマテリアルの種類はあまり重要じゃない。


そして、本展のサブタイトルは「人の記憶に眠る自然の姿結実させる」。

ここに、マテリアルの魅力を引き出す秘訣があるのだろうか。


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[図録 2800円+税]


アーティスティックでありながらデザイナーだな、と思うのは、
展示の写真撮影がOKなこと。
(本展は一部、しかも携帯カメラでのみ撮影可能)
複製をよし、とするデザインの側面。

Second Nature展だけは全面的にNGでしたが、
たぶんこれは会場側の都合だったんじゃないかな。


...というわけで、iPhone5cで撮りまくりました。
まずは入ってすぐの「ウォーターブロック」。

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座面の水面を波打つ模様が、心のヒダをざわつかせる。
これがなんの模様もない、ただのガラスブロックだとこうはならない。
自然のなにが人の心をざわつかせるのか。


もうひとつの撮影可能コーナー、「虹の教会(Rainbow Church)」。

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マティスのロザリオ礼拝堂にインスパイアされての作品みたいですが、
僕的には丹下健三の東京カテドラルマリア大聖堂を連想してしまう。


500個ものクリスタルプリズムを積み重ねてできた光の柱。

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ドローイング。

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ここにもウォーターブロックが。

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そのほか、自然結晶の造形によって形成される「白鳥の湖」「ローズ」「蜘蛛の糸」も見事。
自然の無作為に身を委ねつつも、トータルとしては作為として収束する不思議さ。
巨大なクリスタルブロックで作られた「レインボーチェア」にも圧倒される。

人は何に対して「美しさ」を感じるのか。
どのようなカタチに美しさを見出すのか。
自然の持つ混沌さと整然さの同時性はいかような存在意義があるのか。

ただ好きなものだけを作ればいいわけではない。
それでは趣味の世界を出ない。
自分が作ったものを多くの人に対して、社会に対して厳しいジャッジを仰ぎ、
そのジャッジに耐え抜くものを作ること。
それがモノづくりに生きる、ということではないだろうか。

そのためには「人の感覚」というものを徹底的に研究していかなければならない。


会場である東京都現代美術館(MOT)もなかなかステキな空間。
柳澤孝彦の設計により1994年竣工。

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ヤノベケンジのカラフルな象。

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しかし常設展はイマイチだったな。残念。