Number 9 【セシル・バルモンド】

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Arupの副会長であるセシル・バルモンドの著書。
a+uで彼を知り、wikipediaでこの本を知りました。

a+uで彼の文章を読んで、建築家独特の難しい言い回しにちょっと心配したけれど、
とても読みやすく、数学の苦手な僕でもあっという間に読み終えました。

この本を大学の図書館ではなく、世田谷区の図書館で見つけたのも納得。

この本には建築や構造については一切触れられていません。
そして難しい数学の専門書でもない。


あるのは「シグマ・コード」というシンプルな数字の哲学。
数学の構造を通じて伝わってくる構造の魅力。

小さい頃から勉強が好きだった。
家の手伝いを逃れることのできる唯一の理由だったから。

勉強はそれなりにできたけど、ただ算数だけは苦手だった。
国語や英語などの文系科目のほうが好きだった。
にもかかわらず理数系の高専へ進んで僕はエンジニアになった。

しかしエンジニアとしての誇りを得られないまま、
僕は14年間勤めた会社を辞め、美大へ入り、今デザインを学んでいる。

はたして、エンジニアになったのは間違いだったのか?

僕はその答えを探すべく今この大学にいるのかもしれない。
そして...答えはすでに見えているはず。


この本は一言で言えば「数字の不思議」。

僕が知っている数字の不思議は...

  1 × 8 + 1=9
  12 × 8 + 2 = 98
  123 × 8 + 3 = 987
  1234 × 8 + 4 = 9876
  12345 × 8 + 5 = 98765
    ・
    ・
    ・
  123456789 × 8 + 5 = 987654321

この程度。


さて、本書でキーとなる要素は「シグマコード」。
これはある数値の全ての桁を1桁の数字になるまで足してゆき、
最終的に残った一桁の数字。

例えば、

  36のシグマ・コード(Σ36)は、3 + 6= 「9」
  91のシグマ・コード(Σ91)は、9 + 1 = 10 =1 + 0 = 「1」
  239のシグマコード(Σ239)は、2 + 3 + 9 = 14 = 1 + 4 = 「5」

このように全ての数値は固有のシグマ・コードを持ちます。

そしてこれらのシグマ・コードには驚くべき法則性が隠れている。

  「9もしくは9の倍数をある任意の数に足した場合、
   答えのシグマ・コードは元の数のシグマ・コードと等しくなる。」

  「ある任意の数から9もしくは9の倍数を引いても、
   答えのシグマ・コードは元の数のシグマ・コードと等しくなる。」

  「ある任意の数に9もしくは9の倍数を掛けたとき、
   その積のシグマ・コードは常に9になる。」

  「ある任意の数を9もしくは9の倍数で割ったとき、
   元の数とその余りのシグマ・コードは等しくなる。
   元の数のシグマ・コードが9の場合は必ず割り切れる。」


例えば、

  356 + 9 = 365 (Σ356 = Σ365 = 5)
  987 - 27 = 960 (Σ987 = Σ960 = 6)
  473 × 36 = 17028 (Σ172028 = 9)
  1468 ÷ 45 = 32余り28 (Σ1468 = Σ28 = 1)

さらに小学校の時に習う九九の一覧や、階乗数列の一覧を、
シグマ・コードに変換すると見えてくる明確な規則性。
一見規則性などないかのように見える素数群も、
シグマ・コードに変換するとあるつながりが見えてくる。

著者はただこれらの法則を見いだすだけでなく、
その法則の存在理由をも求していく。

そして「マンダラ」「パワー・マンダラ」というシグマ・コードの
構造を図式化したものでそれを説明する。

全ての数は1~9の一桁のシグマ・コードへと通じ、
その中でも「9」という数字は全てのはじまりと終わりを司る特別な数字。


締めくくりの言葉。

数のマンダラはわたしにこういうことも教えてくれた。「現代的」であるということは、必ずしも今までとは「違う」ということではない、つまり過去からの断絶を意味するのではないということだ。~(中略)~同じ情報を新しい方法で組み立て直すということなのだ。それは絶対的というより相対的に新しい方法であり、おそらくそのことによって正確さを増すのだと思う非対称的な図形の見かけのねじれやつながりの悪さを怖れる必要はない。それはわたしにとっては、まさにもうひとつの物の見方であり、自分の周囲で何が起こっているかをもっと正確に見るための方法なのだ。それによってさらに認識を深められるという希望が与えられるのだ。


渾沌としているように見える世界も、よくよく見れば秩序立てられているものだ。
正しい秩序は美しく、調和がとれている。

その秩序が見いだされ、整えられたものが「構造」なのではないだろうか。


この本には「構造」を考える上での重要なヒントが隠れている。
そんな気がしました。


次は「インフォーマル」だな。
すでにもう図書館から借りてるのだけど、こちらは分厚く、
読むのが大変そうです。

リベスキンドとの共著の「Unfolding」もすごく興味あるのだけど、
まだ翻訳されていないみたい。

誰か翻訳して~!