BRIDGE 風景をつくる橋

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課題で最初橋も設計したい、と言っていたこともあって、
先生が貸してくれた本。

大野美代子さんという橋梁デザイナーの作品集です。
橋梁デザイナーといっても、元は多摩美のインテリアデザイン出身。
最初はインテリアデザインの仕事をしていたところ、
ひょんな縁で橋梁を手がけるようになったとか。
剣持勇さんに師事し、倉俣史朗さんと机を並べて仕事をしたこともあるのだとか。

1971年、まさに僕が生まれた年にエムアンドエムデザイン事務所を設立し、
男社会の土木橋梁の世界で三十有余年活躍。


日本の橋梁は、長い間、技術者のみによって設計されてきた。
技術の高さが、意匠の高さとされていた。
まさに「Form Follows Function」を地でいく世界だった。
その意味ではモダニズムの核となる世界だったのかもしれない。


しかしそんな橋の世界にもデザインは必要だった。
だって橋も人が使うもの。
技術と社会の接点があるところに必ずデザインはある。

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[大杉橋]


過去に大野さんがデザインした橋を渡ってました。
江戸川区を流れる新中川にかかる大杉橋。
新中川の個性的な橋梁群のなかでも一際目を惹いた橋の1つでした。


昔から橋を見るのがなんとなく好きだった。

音戸大橋や早瀬大橋、因島大橋などの瀬戸内にかかる橋にはじまり、
東京のレインボーブリッジ、横浜のベイブリッジ、果てはNYの
ブルックリンブリッジに至るまで橋の魅力に吸い寄せられたのは、
たぶん、構造がダイレクトにその外観に表れるという橋の特性によるのだろう。

良い構造の橋は美しい。
しかしそれだけでは不十分だ。
...そのことをこの本は教えてくれる。

良い構造に加え、良くデザインされた橋はもっと美しくなる。


日本の橋は確かに美しい。
しかしここ最近、世界の美しい橋を写真ベースではあるけれど、
たくさん見るようになって思ったことは、
「日本の橋は単調だ」ということ。
シンプルなのは良いけれど、何か物足りない。
日増しにそう感じるようになりました。

熊本の峡谷にかかる鮎の瀬大橋や長崎港入口にかかる女神大橋など、
大野さんが手がけた橋は確かに美しい。
そして想像以上に多くの日本中の橋を手がけていることに驚かされる。

しかしそれでも日本の橋の多くはまだまだ単調だ。
大野さんが技術優位の世界でデザイナーなりに奮闘してきたように、
もっと多くのデザイナーが声を大にして橋をデザインすべきなのではないだろうか。


僕はとくにカラトラバの橋がすごく好きです。、
構造をダイレクトに伝えるものであるが故に直線的になりがちな橋のデザインを
ここまでオーガニックにできるのか、と感嘆させられる。

大野さんも陣ヶ下の高架橋で桁と橋脚がオーガニックに結合するデザインを
しているのですが、とてもステキだと思いました。


自然の中に白く直線的な橋が架かる様子はメリハリがあって、
それはそれで調和がとれて美しいのだけれど、
これからの橋は社会と自然がもっと融合する
オーガニックなものになるべきではないだろうか。