テレビでとある画家が紹介されていました。
その人が描く絵はいわゆる精密画なのですが、
驚くべきは色鉛筆で描かれている、ということ。
線の細い鉛筆では色彩が淡くなってしまうと思うのですが、
その人が描く絵はとてもコントラストが鮮やか。
そして精密なんだけどどこか画家の個性が刻まれていそうな独特な雰囲気。
もう一つ惹きつけられたのは描き続けた自画像。
新聞紙上に描く、という点以外はとりたてて特徴のないその絵に、
還暦近くになるまで誰も振り向かなかった。
それでも彼はひたすら描き続けた。
彼に筆をとり続けさせたものはいったいなんだったのか。
それが知りたくて、彼の絵がみたくなった。
調べたら高知の香美市立美術館で展示をしている、とのことで、
このGWに行ってきました。
世間がなんと言おうと貫き通すべき「芯」。
僕はそれを持っていたい。
展示会場内は撮影禁止なので、おもに美術館のレビューになってしまいますが。
香美市立美術館は高知市内からR195を進んでいるとほどなく到着します。
二つの切妻屋根が特徴的。
この建物全部が美術館なのではなく、右側の二階部分の一室のみ、という
わりかし小ぢんまりとしたもの。
双頭の切妻屋根、というと佐川美術館を思い浮かべますが、
それほど立派なものではなく、市民プラザの域を出ないものではありますが、
なかなか良い雰囲気で僕は好きです。
今回の展示といい、次回の片岡鶴太郎展といい、展示のセンスも良い。
入口では石の風車が出迎えてくれます。
箱の彫刻。
人工の象徴である箱もこのように組み合わせるとまた違った印象になる。
永遠に広がる波。
隣には八王子宮という神社があります。
それでこの美術館のある建物も「プラザ八王子」というのかな。
午後二時前に会場に到着したのですが、
ちょうど二時からスタッフによる作品説明があって、
いろいろお話が聞けました。
吉村さんが使う色鉛筆は、日本製ではなく、ドイツ製のものを使っているのだとか。
日本製の色鉛筆はロウ成分が多く重ね塗りに適してないからだそうです。
近寄ってタッチを眺めると、確かに色鉛筆なんですが、
少し離れて全体を眺めるとスーパーリアル。
それでいて、独特の作風。
グリッド分割して徹底して精密模写しているわけですが、
単なるコピーに留まらないのは、画家の「執念」とでもいうものが
絵に宿るからだろうか。それが作品の個性になるのだろうか。
とても良い展示でした。思わず作品集も購入。
次回の片岡鶴太郎展も見に来たいなあ...