夏休み前にMOMAT学芸員である大学の先生からもらったチケット。
会期終了間際になってようやく行ってきました。
しかし今日は暑かった~
暑い日に涼しい美術館で美術鑑賞...
なかなかクールな夏の過ごし方だと思います。
ブログをやるようになって、写真をかなり撮るようになり、
それなりに写真に興味を持つようになって、
デジタル一眼まで買ってしまいましたが、
ただそれでも写真の技法、技巧にはあまり興味がなくて、
それなりに良い機器で偶然に良い写真が取れればそれでいいや。
写真に関してはそんなスタンスでした。
だからこの展覧会もタダ券がなければ見にいかなかったと思います。
...でもやっぱり見に行ってよかった。
見に行く機会を与えてくれた先生に感謝です。
写真に関してはそんな感じのスタンスだったから、
当然アンリ・カルティエ=ブレッソン(Henri Cartier-Bresson:以下HCB)も名前さえ知らず。
1908年フランスに生まれ、最初は絵画を学ぶ。
1930年代初頭頃から本格的に写真に取り組む。
1947年ロバート・キャパらとともに国際写真家集団「マグナム・フォト」を結成した。
小型カメラ・ライカを愛用し、世界中を旅して回り、無数の写真を撮影した。
ポートレートもあれば、風景写真もある。
とにかくいろんな写真を撮っている。
晩年は絵を描くことに専念し、2004年死去。
展覧会タイトルの『De qui s'agit-il?』はフランス語で
「いったい何を言いたいのだ?」という彼の口癖なのだそうです。
「決定的瞬間」という言葉で有名な、20世紀最大の天才写真家。
ただ、自分のような素人にしてみれば、彼の写真1枚突然見せられても、
たいした興味も引き起こされなかったと思う。
全ての写真はモノクロで、写真から色彩情報を抜くだけで、
それはかくも情報量を減衰させてしまうものらしい。
無数にある彼の写真を眺めてはじめて彼の写真のすごさが
少しだけ理解できたような気がします。
そして写真のそばに、彼と彼に影響を与えた人々の言葉を添えることで
より彼の写真を理解することを助けてくれます。
写真の多くは人物像で、世界中を旅した彼は
実にさまざまな人種を、文化を、家を、写しだしています。
無名な人はもちろん、アンリ・マティスやアルベルト・ジャコメッティ、
パブロ・ピカソ、マックス・エルンスト、レオノール・フィニなど
たくさんの有名人の写真もありました。
※本展示で展示されていた作品と必ずしも一致するものではありません。
こんなにたくさんの人がいるんだ、こんなにたくさんの世界があるんだ。
そんな当たり前だけど、なかなか気づかず、それでいて最も大切なことを
彼の写真は教えてくれる。そんな気がしました。
好きな作品は、
「サン=ラザール駅裏、パリ、フランス」1932年
「ブリュッセル、ベルギー」1932年
「画家・彫刻家アルベルト・ジャコメッティ、パリ」1961年
「アンリ・マティスとモデル」1944年
といったところでしょうか。
モノクロ、という点ではグレゴリー・コルベールと同じような
魅力に通ずるところがあるのでしょうか。
(コルベールはセピア調ですが)
そして心に響いたことばたち。
「写真を撮ること-
それは、ある出来事と、それを指し示す視覚的なフィルムがもつ
厳密な構造を瞬時に認知することである。
それは、頭と眼を心の照準に合わせることだ。
それは、ひとつの生き方である。」
「私にとって重要なのは、視覚的な態度と感情だ。
視覚的な態度とは、構造、つまり幾何学のことだ。
幾何学がなければ、別のものになってしまう。
そしてまた感性をもっていなければならない。
いまや人は何だって学ぶことができる-
どうやって愛し合うかを教える本すらあるんだから-
しかし、感性を教える学校はない。」
「確かに私は反逆者(アナーキスト)だ。
なぜなら私は生きているから。
人生とは挑発なのだ・・・。
私は権力をもつ人々や彼らを権威づけるものすべてに逆らう。
アングロサクソンはアナーキズムが何であるかを学ばなければならない。
彼らにとってそれは暴力なのだ。
猫は無秩序(アナーキー)が何であるかを知っている。
猫に尋ねるがいい。猫はわかっている。
彼らは規律や権威に逆らう。
犬は従うようしつけられるが、猫はそんなふうにしつけられない。
猫は混沌をもたらす。自由論者-それが人生だ。」
「ポートレイトを撮る際に、相手は納得しているとはいえ、
犠牲者でもあるのだから、内に秘めた静寂を掴みとろうと
欲するとしても、被写体のシャツと肌のあいだに、
カメラをすべりこませるのは、至難の業と言えるだろう。
そこへいくと、鉛筆でポートレイトを描くとしたら、
内に秘めた静寂を得るのは、描き手の方だといえる。」
先にこの展示を見にいった知人は
ヴィンテージ・プリントが良かったと言ってましたが、
「ヴィンテージ・プリントってなに?」な素人の僕には、
「あ、なんか雰囲気違う~、でもやっぱなんか良い!」ってな程度。
ちなみにヴィンテージ・プリントとは撮影者が取ってすぐに自らプリントしたもの、
みたいです。要するにプレミアものの写真ってことですね。
彼の作品に続いて、彼自身の生い立ちのアルバムに続き、
最後は彼を紹介するフィルムコーナー。
2スクリーンありましたが、片方は10分、15分程度ですが日本語訳なし、
もう一方は日本語訳ありですがこちらは1時間程度。
トイレにいきたかった僕はちら見する程度でスルーしてしまいました。
帰っていろいろググってみると2006年映画化され、
DVDも出ているみたいですね。
(リンクをクリックするとAmazonの購入ページに飛びます)
機会あらば観てみたい~
最後に図録買いました。1,800円。
すべての写真、言葉を網羅しているわけではありませんが、
コンパクトな正方形に要点、要所をまとめていてなかなか良さげです。
本展は8/12、今度の日曜まで開催されてます。
興味ある方は急ぎましょう。(※本展はすでに終了しています)
どしても見に行けない方は彼がロバート・キャパ、デヴィッド・シーモアらと
立ち上げたマグナム・フォトのオフィシャルサイトで彼の作品を見ることは
できますがやっぱ生は違いますぜ。
とくにヴィンテージ・フォトなどは素人が見ても良いな〜と思えますし。
追記: Pen7/1号にHCBの特集があります。よかったらどうぞ。