[ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ『マグダラのマリアの改悛』(1590年代半ば)]
(出典:Wikipedia)
秩序の支配を受けることとなったルネサンスへの反動から、
マニエリスムを経て時代はバロックへ。
不安定なときは安定を求めて人は動くが、
一度安定してしまうと、今度は退屈という感情が襲ってきて、
今の安定を捨て、新たな別の安定に向けてあえて不安定を選択する。
歴史はその繰り返しだ。
本記事は社会人学生時代の自分の西洋美術史のテスト答案を元に再構成したものです。
テストは授業内容(ルネサンス以降の美術史)の中から2つ、
自分にとって「最も大きな発見」をピックアップして自分の意見も含めて説明しろ、というもの。
自分は「バロック様式」と「ロマン主義」をピックアップ。
特にバロック様式は西洋美術史の中でも一番好きなジャンルでもある。
採点は見事100点をいただきましたが、
だからといって本記事が客観的に絶対正しい、ということを保証するものではありません。
あくまで一学生の主観に基づくレポートであることをご理解ください。
[ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ『マタイの召命』(1599−1600年)](出典:Wikipedia)
一口にバロック様式、と言っても時期や地域、作家の個性などによって様々な特徴がある。
イタリアで発生した初期バロックは、ルターの宗教改革に対抗し、
カトリック世界の再建を目指すものとして発生したが、
カラヴァッジオの「マグダラのマリアの改悛」や「聖マタイの召命」などに代表されるように、
それまでの複雑な構成がテーマだったマニエリスムから一転して
光と影をダイナミックに駆使した、明快でわかりやすいものであった。
[ピエトロ・ダ・コルトーナ『ウルバヌスⅧ世の栄光』(1633−39)]
[フィリッポ・ラグッツィーニ:サンティニャーツィオ広場のパラッツィオ]
一方、盛期バロックにおいてはこのダイナミズムがより発展して、
ピエトロ・ダ・コルトーナの「ウルバヌスⅧ世の栄光」や
フィリッポ・ラグッツィーニのサンティニャーツィオ広場のパラッツィオなど、
天井画や劇場空間で仰角法による上昇運動を表現することで、
理屈ではない感覚的なものとなった。
[エル・グレコ『神殿を清める』(1570〜75頃)](出典:Wikipedia)
[エル・グレコ『三位一体』(1577〜79)](出典:Wikipedia)
[スルバラン『聖ブルーノと食卓の奇跡』(1625−26)](出典:Wikipedia)
[スルバラン『十字架上のキリスト』(1627)](出典:Wikipedia)
スペインではエル・グレコ「神殿を清める」「三位一体」、
スルバラン「聖ブルーノと食卓の奇跡」「十字架上のキリスト」など、
よりカトリック色の濃い独特のバロック様式が展開した。
[ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『悔い改めるマグダラのマリア』(1630頃)](出典:Wikipedia)
[ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『聖誕』](出典:Wikipedia)
[ニコラ・プッサン『アルカディアの牧人』(1638−39)]
ルネサンスの影響がなかったフランスにおいては
イタリアやスペインほどのダイナミズムは見られず、
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの「鏡の前のマグダラのマリア」「聖誕」のように
ダイナミックな光と影のコントラストを用いながらも穏やかな「静」を描いたものや、
ニコラ・プッサンの「嬰児虐殺」「アルカディアの牧人たち」のように古典主義なものもあった。
[ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ『聖テレジアの法悦』(1645−52)](出典:Wikipedia)
[ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ:サン・ピエトロ寺院のバルダッキーノ]
このようにバロックにもいろいろあるが、
個人的には「動き」を表現するには三次元の彫刻が一番効果的で、
ベルニーニの「聖テレジアの法悦」「バルダッキーノ」などがバロックの最高傑作と感じた。