渋谷の松濤美術館へ行ってきました。
群馬県美での白井晟一展以来、すっかりファンになってしまった。
Bunkamuraを通り過ぎて、しばらく進んだ住宅地の中に
こぢんまりと紛れ込むように建っている。
東京タワーそばのNOAビルと同じように石壁が独特の雰囲気を醸し出している。
人を寄せ付けない荘厳さと同時に、人を惹きつける美しさがある。
そして凄まじい建築のエネルギーを感じる。
ちょっと残念なのはそのスケールと立地。
規模としては桜新町の長谷川町子美術館と同じくらいの小規模で、
周囲を住宅や電線で囲まれてしまっているのが非常に惜しい。
この建物はもう10倍くらいのスケールで荒野にぽつんと建っていてほしい。
どんなに良い建築でも、環境が不十分だとその価値も半減してしまう。
環境ってやっぱり大事だよね。
ファサード。
周囲が住宅地で密集しているため、これが精一杯の引き。
そして引いて撮ると、どうしても周囲の住宅、電線が視野に入ってしまい、
せっかくの荘厳さも台無し。
だからやっぱり寄って撮るしかないよね。
石壁がやはり良い。
周囲が住宅に囲まれているため、周囲を回る楽しさもなく、中へ。
まずは館内マップ。
かなり写りこんでるけど。
写真は2階のもの。
中央の楕円形の吹き抜けを囲むように各部屋が配置される。
エントランス。
この美術館の最大の特徴はやはり中央の吹き抜け。
一番の見所。
上を見上げると、楕円形に切り取られる青空。
バロックやなあ...
カサ・ミラの中庭を彷彿とさせる。
(...行ったことないけど)
そして吹き抜け中央(1階)にかかるブリッジ。
天国への架け橋を思わせる。
真っ直ぐではなく、弓なりの橋桁がまた良いんだな。
欄干につけられている紋章。
橋を下から眺める。
橋中央の丸い明かりは橋に取りつけられたものではなく、
内部の照明がガラスに映りこんでいるだけ。
映り込みを避けながら撮影するのが大変だった〜
窓は開閉できるみたいだけど、開けたら怒られそうだったので、
ガラス越しに撮影。
さらに地下2階から撮ると...
橋桁がほのかに緑色に光るのは...
底部の噴水の照明が反射しているから。
吹き抜けの底部がまるまる水面になっているのがまたニクイ。
1階ロビー。
2階ロビー。
階段。
階段の独特な照明。
地下2階に展示されている模型。
藤森さんの「藤森照信の特選・美術館三昧」という本に、
この美術館が取り上げられていて、藤森さんはこう言ってます。
わざとらしさというか、いってしまえばクササを嗅ぎとるようになった。
本当のロマネスク建築にはないクササが存在感の裏に張りついている。」
個人的には、藤森さんの建築こそ、よっぽどアクが強くてわざとらしい、
クササのある建築だと思うんだけど。
といっても、僕はそのクササのある藤森建築、白井建築が大好きだ。
わざとらしさは、言い換えれば設計者の「意図」だ。
建築においてはその「意図」が明確に見えることが大事なのではないだろうか。
そしてそこが建築がデザインとは異なる部分だと思うのである。
デザインはデザイナーの意図を見えなくするものであり、
そうすることがスマートで、粋とされている。
どうも僕はデザインのそういう部分があまり好きじゃない気がする。
そして昨今の建築のデザイン化の傾向に反発してしまう。
個性のない建築。
機能だけを最優先する建築。
そんな建築のどこが面白いのだろう。
長く使い続けられるのに一番必要なものは「便利さ」なのだろうか。
僕にはそうは思えない。
「便利さ」ではなく「存在感」を与え続ける建築。
それこそが長く、大切に使われ続ける建築であり、理想の建築ではないだろうか。
【information】オフィシャルサイト
アクセス:JR・東急・地下鉄 渋谷駅より徒歩15分 京王井の頭線 神泉駅より徒歩5分
開館時間:特別展期間中:午前10時~午後6時(金曜のみ午後8時まで)
公募展・小中学生絵画展・サロン展期間中:午前9時~午後5時
※最終入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:原則毎週月曜日(国民の祝日又は休日に当たる場合は開館)
国民の祝日又は休日の翌日(土・日曜日に当たる場合は開館)
展示替期間、年末年始(12月29日~1月3日)
入館料:展覧会による