10年前に買った「CasaBRUTUS特別編集 安藤忠雄×旅 総集編」を久しぶりに読み返していると、
愛媛にも安藤建築が、それも安藤さんにはめずらしい木造建築がある、
ということに改めて気づきました。
買った当初は東京に住んでていて、
遠い愛媛にある建物のことにはあまり興味が向かなかったんでしょうね。
...というわけで西条市の光明寺に行ってきました。
開基は戦国時代の1520年頃、現在の住職は22代目。
2000年に安藤忠雄設計で全伽藍(本堂、客殿、礼拝堂、庫裡)を新築。
戦国時代開基の古刹を現代建築界の巨匠が大胆に刷新する。
長年積み重ねてきた伝統的な寺社建築の枠を打ち破る。
いろんな面で批判は決して少なくなかったことでしょう。
しかし考えてみれば、伝統的な寺社建築も最初は革新からはじまったはず。
革新なきところに前進はなく、廃れゆくのみ。
実際、過疎化が進む地方においては檀家が減り、
寺社を維持していくのが難しくなっていると聞きます。
三方を格子に囲まれた本堂の中は格段に明るい。
従来の薄暗い本堂からすれば違和感はあるものの、
木材という昔から馴染みのある素材に囲まれているせいか、心地よさを感じました。
この建物はお寺にとっても、コンクリート造を得意とする安藤さんにとっても、
革新的な挑戦だったのでしょうね。
山門。
山門をくぐると...
見えてくる本堂。
周囲が住宅街ということもあり、見事な本堂の外観全体を視野に入れる余裕がないのが残念。
本堂そばの客殿、庫裏、納骨堂はコンクリート造。
屋根は金属で覆われているのですが、サビが出てきているのが気になりました。
まあ朽ちない建築なんてないのだけど...
旧本堂に使用されていた鬼瓦。
玄関口の装飾。
これも旧本堂に使われていたものでしょうか。
本堂入口。
本堂の中は側廊で囲まれた二重構造なのですが、これがまあ見事。
本尊
天井がこれまた見事なんだな。
コンクリートの建物内(たぶん納骨堂あたり)。
木とコンクリートの取り合わせ。
木造の格子構造といえば、隈さんの十八番ですが、
こちらは複雑な造形が魅力なのが対し、
安藤さんのそれはすっきりシンプルなのが魅力なのでしょうか。
そのシンプル性の魅力は安藤さんのコンクリート建築と通ずるものがあると思う。
安藤さんが設計したお寺として、この光明寺のほかに淡路島の本福寺水御堂があります。
こちらは総コンクリートで本堂が蓮池の下の地下にあるこれまたぶっ飛んだ構造のお寺です。
また、安藤さんは北海道の真駒内に頭大仏という、
大仏が地中に埋まっている霊園も手がけています。
お寺の新しいカタチに目が離せません。
今月終わりから新国立美術館ではじまる安藤忠雄展に向けて良い予習ができました。
【Information】オフィシャルサイト