地域マネジメントスキル修得講座【第5回-2】

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愛媛大学地域マネジメントスキル修得講座第5回2日目。

本日の講義は伊予市双海町の若松進一さんの人間牧場。
噂はかねがね聞いておりましたが、ようやく行くことができました。

若松さんは双海町職員として長年双海のまちづくりに奔走し、
平成15年には国土交通省の「観光カリスマ百選」に選ばれました。
まさに地域づくりのスペシャリスト、カリスマです。

見た目は普通のおっさんです。
正直地味です。
しかしひとたび話しだすとその話術に引き込まれます。
そして面白い。
笑いあり、感動あり。
これまでに何度か若松さんの話を聞く機会がありましたが、
氏の活動そのものに触れる機会はなかったので、
「話の上手い、面白いおっちゃん」という程度の認識しかなかったのですが、
今回人間牧場に訪れて、この人はホンモノだと確信した。


「人間牧場」というネーミングは個人的にはあまり良いイメージを持ってませんでした。
牧場でスパルタ的(道場的?)に地域づくり根性なるものを叩き込む場所だと
勝手に妄想していたわけですが...

素晴らしい空間でした。
講義そのものは普通の座学ですが、学校の教室でやる講義とはひと味もふた味も違う。
若松さんの話以上に若松さんの作った空間に魅了されました。
(もちろんお話も素晴らしかったですが)


良い教育は良い環境で培われる、ということですね。


集合は海際の下灘コミュニティセンター。

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人間牧場までは狭い山道で、車もそんなに置けないので、ここから乗り合わせ。


海のそばの山道を登ると見えてくる絶景。

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下灘港が一望できます。


水平線の家。

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昼間は広い海を眺め、夕方は美しい夕日を眺め、夜は星を眺める。
良い場所に良い建物を建てる。
これぞ良い建築。


石窯もあります。

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男の隠れ家、ツリーハウス。

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水平線の家の前にある風呂小屋。

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あえて母屋から切り離し、一人瞑想にひたれる場所。
この水平線の家と風呂を見たとき、ル・コルビジェが母のために建てた「小さな家」を
思い浮かべました。

建築の機能は広さや豪華さで決まるものじゃない。
いかに心地良く過ごせるか。
そのことをこの場所は感じさせてくれます。


開放的な空間での講義は気持よく学べる。

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本日のテーマは「地域活性化論」。講師はもちろん若松さん。

「地域づくりとはなんぞや?」というところから講義ははじまります。
地域づくりとは人づくり。
人間は生まれたときは99.99%同じ。
「生まれつき」という個性は無く、育っていく環境と過程において個性は形成されてゆく。
人間の顕在意識と潜在意識の割合は、水に浮かぶ氷と同じ「1:9」なのだとか。
それを認識の努力によりその比率を変えてゆく。
それが人づくり。


人づくりとは「自分づくり」。
他人に影響を与えることはできてもを「つくる」ことはできない。
つくることができるのは自分のみなのである。
自分づくりとは、感覚により情報を取り入れ(知識)、
感情により何かしらをアウトプットする(知恵)である。
読んで、聞いて、見ること(イン)で、書いて、喋って、実践すること(アウト)である。

アウトプットの最初の原形が「記録」である。
「記録されないものは記憶されない」という宮本常一の言葉は、
自分がこれまでしてきたことが間違いではない、ということを確信させてくれる。
このブログでの記録が大事なものであることを、自信を持たせてくれる。

ただ記録するだけではだめで、その後に「喋って」「実践する」ことが重要なわけで。
とりわけ自分はもっと喋ることをしなければならないのだと思います。
そこが苦手なウィークポイントではありますが。


愛媛県では平成の大合併で70の自治体が20の自治体に再編されました。
これが良かったのか悪かったのかは賛否両論あると思いますが、
自治体の巨大化によるまちの無個性化は進んだのは事実。
旧市町村自治体のキャッチフレーズから地域の特色が見えてくる。
若松さんはこの70の旧市町村のキャッチフレーズを紹介しながら、
各地域の特色を説明してくれたのですが、実にすらすら説明してくれるわけで。
自分の足で飛び回っている証拠ですね。

巨大なスケールではなく、適度なスケールでのまちづくりを、という感覚も、
城川町ではなく、遊子川地区にこだわる自分の感覚ともマッチしていて、自信になる。


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午後は職員として双海のまちづくりに携わってきた経験を話していただきました。

夕焼けコンサートや夕やけこやけライン、道の駅の整備、人間牧場の開設など。
正直アイデアの奇抜性よりは、若松さんの大胆さと勇気の結果、が目立つような。
ここにやはり地域づくりには元気のあるリーダーが必要なのかな、という気がするのですが、
現代社会においてはカリスマ的なリーダーが育ちにくい状況になっているような気もして、
ますますこれからの地域づくりは難しくなっていくような気もしなくもない。
そう考えてしまうと面白い若松さんの話も、少し気が滅入ってしまう部分もあるけれど、
それでも若松さんが面白おかしく話すのは、結局は前向きになるしかないんだ、という
若松さんなりのアドバイスなのだろうか。

次代のリーダー像について、自分のコピーではなく、自分を否定するものであるべき、
という若松さんの言葉から、ああ、この人は骨の髄まで、地域づくり人なんだなあ、と。
ハードは変わらずとも、ソフトは常に変わってゆく。


若松さんは年輪塾という勉強会もやられているそうです。

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現在は二宮金次郎を勉強されているとか。
薪を担ぎながら本を読んでいる姿がよく銅像になっているわけですが、
金次郎はどんな本を読んでいたのか?
考えたこともなかったわけですが、彼は「大学」という本を読んでいて、
その本にはこのようなことが書かれていたそうです。


「一家仁 一國興仁 一家讓 一國興讓 一人貪戻 一國作亂 其機如此」

 一家仁なれば一国仁に興り、一家譲なれば一国譲に興り、
 一人貪戻なれば一国乱を作す。その機かくのごとし。
 (出典はこちら

どんな大事も、小さきことの積み重ね、ってことでしょうか。


気持ちの良い空間で、気持ちの良い学び。
これを幸せと呼ばずしてなんという。


帰りはこれまた気持ちの良い夕やけこやけライン。

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この週末の三日間、充実した学びでした。
この学びの成果を実践で生かせるように頑張りたいと思います!