地域マネジメントスキル修得講座【第4回-2】

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愛媛大学地域マネジメントスキル修得講座第4回2日目。


一日目と同じく場所は内子の川登筏の里交流センター「いかだや」。
一日目はフィールドワークでしたが、二日目は座学中心でした。

午前中は笠松先生による「地元学実践による農山漁村の再生」、
午後はプロジェクト研究の検討でした。

笠松先生はこの講座の事務方として毎回お世話になっているのですが、
それがすっかり板についていて、先生であることが意識から遠のいていましたが、
今回の講座で立派な先生であることがあらためて証明されました。


全国の農山漁村は貧困にあえいでいる。
極端に言えば、多くの村落が近い将来消滅の危機に瀕している。
中には勝ち組の農山漁村もあるけれど、ほんの僅かではないだろうか。
20世紀の都市型社会のツケが軒並み田舎へのしわ寄せとなっている。

かつてはムラ社会で400年もの長きにわたり栄えた時代があった。
今こそ、田舎の良さを見出し、再生を図らなければこの国はだめになる気がする。


僕たちに必要なのは、世界を広くすることではなく、視野を広くすることである。
規模を大きくすることではなく、適度なスケールを保つことである。
厳しい自然を隔離して生きることではなく、そのなかで生き抜く術を学ぶことである。


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農山漁村、つまり田舎を再生するためにしなければならないことはなにか。

都会の資本を投入すればいいのか。
資本の投入が必要なのは確かだが、
借金大国ニッポンには今や国家にすらその資本はない。

今や田舎そのものに自立が求められている。
田舎が自立するにはどうしたらいいか。
田舎自身が考えるのである。
国や中央に考えてもらうのではなく、自分で考えるのである。

地元を学ぶ。だから「地元学」。
今年のはじめにの西予グランプリでゲスト講演していただいた吉本哲郎さんが
提唱していたあの地元学。

それぞれの地元によってその特色は千差万別であるから、
地元学に一貫した手法はない。
だから地元学は学問ではない。


世界に一つしかない地元の誇るべき魅力を知る。
地域が自律的に動き、発展する原動力がそこにある。


昔の田舎は自立していた。
高度成長期を境に、田舎には新旧二つの世代が存在する。
旧タイプの世代は自立の精神を持っていた。
しかし、高度成長期は社会を便利にした。
便利な社会は自立の精神を失わせる。
皮肉にも科学の発展が精神を弱らせたのである。
世代間のギャップは断絶を生み、自立精神の伝承を妨げる。

旧世代の人たちも現在相当の高齢に達している。
労働者として動けなくなり、新しい世代にも馴染めないまま、
田舎に残らざるを得ず、かといって自立の精神を後代に伝えることもできない。

だから今こそ学ばねばならない。
自立の精神を。


過疎とは集落が消滅へと向かう過程である。
その特性上、どんなに前向きに地域再生に取り組むにしても、
そのことは念頭においておかなくてはならない。
言い換えれば危機意識を持っていなけれならない、ということだけど、
自分が魅力を見出した地域がなくなってしまう、と
想像するだけでも切なくなる。
好きになればなるほど胸を締めつけられるような痛みを感じる。

確実に自分が地域の魅力を見いだしている証拠なんだろうけど、
なんともやるせない気分になるものです。


自分を学ぶ、というのは意外と難しいものである。
常に主観的であるから冷静な客観的視線を持ちにくいのである。
それを補うのが風の人(ヨソ者)である。

風の人は土の人(地元の人間)より偉いから呼ばれるのではない。
土の人にはない視点を持つから呼ばれるのである。
風の人と土の人が互いに手を取り合うことで自分を知る。
自分の住んでいる地域を知る。
自分の住んでいる国を知る。

地域おこし協力隊は風の人である。
風のままそのまま吹き去るか、土となってその土地に根ざすかは賛否の分かれるところだけど、
自分は後者が自然の姿だと思ってます。
風はどこへでも行けるけれど、なにも産まない。
土は木を育て、森を作る。

僕は森を作りたい。


地元学を実践する笠松先生の活動は本当に素晴らしいと思います。
デザインとはまた違ったアプローチですが、
これもまた田舎の魅力を分かりやすい形で伝えるためのイメージ作りの一つなんですね。

それを自慢することなく、 淡々と語る。
これが真の実践者の姿なんでしょう。


講義では、地域おこし協力隊など地域支援人材などの配置が上手くいかない五事例を
紹介してくれましたが、これが悲しいことに当たらずとも遠からず。

地域おこし協力隊は公務員であって公務員でない。
その特性を理解し、もっと活かしていくれたら、と思う次第ですが、はたしてどうやら。


午後のプロジェクト検討は例によってグループ討議。
自分はやることは決まってるけど、作品作りがはじまっていない今の状況では
まだとくに目新しい進捗もなく。

ただ、木工材料として間伐材の利用がmustかどうかは、
先日の製材経験からしてもちょっと考えなきゃいけないかなあ、と思いはじめてます。

ただどんなスタイルにせよ、森を意識したものにしたい。
そのために僕は田舎に来たのだから。