世界最大のうそ

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「この本は、世界中のほとんどの本に書かれていることと同じことを言っている」と老人が言った。「人は自分の運命を選ぶことができない、と言っているのだよ。そして最後に、誰もが世界最大のうそを信じている、と言っている」「世界最大のうそって何ですか?」と、すっかり驚いて少年は聞いた。「それはこうじゃ、人は人生のある時点で、自分に起こってくることをコントロールできなくなり、宿命によって人生を支配されてしまうということだ。それが世界最大のうそじゃよ」(パウロ・コエーリョ『アルケミスト』より)


太田総理で。
「子供手当の一部を心のケアをするための費用に充てる」という提案をしてました。

個人的には効果ないと思う。
心のケアは政治じゃできない。


今の世の中、大人も子供も生きにくい世の中だ、と。
ストレスがかかりすぎて、うつ病やパニック障害が急激に増えている。
これら心の病を抱える人々のケアをするシステムが必要なのだ、と。
...一理ある。

しかし一番の要因は、人間自身が弱くなった。
...これに尽きるのではないだろうか。


人間の叡智が高度な社会を築いた。
何もかもが便利になりすぎて、社会が人間本来の機能を肩代わりするようになった。
便利な社会、という鎧に覆われて人間そのものは退化していった。

元々は人間のための社会。
どんなに高度な社会でも人間自身が退化してしまえば、
社会そのものが歪んでくるのは当然ではないだろうか。


弱きを助けるだけでは社会は良くはならない。
弱きが強くなる術を持たなければ。

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僕は医療の専門家ではありません。
下記はあくまで一社会人としての個人的な意見です。


心のケア。

とても大事なことだと思います。
人は他人からの愛情を感じることで幸せを感じるし、強くもなれる。

しかし。
それはあくまで「自分」という核がしっかりしてこそのもの。

種がしっかりしたものでなけれな、どんなに良い肥料を与えても成長しない。
種によって水や肥料を与えるタイミングや与える肥料の種類も異なるわけで。


身体の病気は、比較的症状が明確で原因がはっきりしていて、治癒もしやすい。
(もちろん現在の最新技術をもってしても治癒できない難病もあるけれど)
それに対して心の病は、症状も人それぞれで個別の対処がなかなか難しい。

ソフトウェアのバグはハードウェアの故障以上に複雑で症状の程度の幅も広い。
症状が軽いものは三日で治るものあれば、重いものであれば何年もひきずるものもある。
幸福を損なう存在、という点においては心の病の多発は深刻な問題である。

しかし。
身体の病は医師という専門家による他人主導でなければ治癒できないのに対し、
心の病は、程度の差こそあれ、あくまで患者本人によって自律的に治癒するのが
基本ではないかと思うのです。

もちろん自分で治せないから医師や他人に頼る必要があるのだけど、
本人が心から治したい、という思いがなければどんな名医もお手上げ。
言い換えれば、本人に心から病気を治したい、と思わせることが
心の病の唯一の治療法なのでしょう。


心の病の代表であるうつ病。
それなりに固有症状はあるようですが、はっきりとした定義はないそうです。

十人十色。
すべての個性を満足させることのできる社会なんて存在しない。

だから程度の差こそあれ、
誰でも他人と衝突し、悩みや不安を持っており、何かしらのストレスを受けている。

健常である、ということはストレスがない、ということではなく、
ストレスと上手に向き合っている、ということである。
ストレスを感じることが問題なのではなく、
ストレスに対処することができない、ということが問題なのだ。


かつて前の会社を辞める直前、メンタルクリニックに通っていた。
うつ病とまでは診断されなかったけれど、
モチベーションの低下や睡眠障害、体調不良などに苦しみ、医師の診断を受けていた。
薬も処方してもらっていたけれど、結局それらは僕を助けてはくれなかった。

職場の上司や、友人といった他人の心が僕を励まし、助けてくれた。
そして自分自身、さんざん悩み、考えることで負の連鎖から脱出した。

今だって不安がないわけじゃない。
この歳で大きく方向転換して、借金をしながら大学で学び、
新しい分野への挑戦。
不安の大きさ、悩みの多さは前より大きいかもしれない。

でも僕は以前ほど自分を不幸だとは思わない。
今は悩みや不遇の時期が自分を成長させると信じられるから。
それが「強さ」ということだと思う。

どんな高度社会でも弱肉強食という自然界の法則は変えられない。
弱者保護の精神は立派だと思うけど、やはり限界はある。
なにより本質的ではない。

幸いなことに、人間は唯一自律的に自らの能力を進化させることのできる動物だ。
誰だって強くなれる。
本気で自分を信じて望みさえすれば。
人間は弱者が強者になれる動物なのだ。

未来を担う子供たちに与えるべきものは今も昔も変わらない。
夢と愛情。
それさえあれば子供は自律的に成長する。
強くなる。