故郷の祖母から電話があった。
正月にも帰省せず、連絡もしなかったから心配された。
祖母の声は怒っていた。
...でも愛情のこもった声だった。
遠く離れ、ろくに連絡もしない僕を今でも息子として扱ってくれる。
父母から愛を受けられなかったぶん、
僕はこの人からずいぶん愛を受けたんだな、と今更ながら感じた。
この歳になってなお、その祖母に恩返しをするどころか、
いまだに心配かけている。
日々思う。
「これでいいのか」
...と。
こんな生活を続けてていいのか、と。
お互い頑固なので、昔はお互いしばらく連絡がないと、
意地を張り合って相手から連絡するまで、自分から連絡はしなかった。
そんな祖母が最近は根負けして、祖母の方から電話してくるようになった。
1ヶ月に一度くらい電話しろと言うようになった。
祖父も高齢で病弱となり、心細くなっているのだろう。
若い頃は口やかましい祖母を疎んじていた。
僕を「自分のことしか考えない人間」と叱責し続けた彼女に反発し続けた。
頑固で自分が正しい、と思うことを貫き通す強い女だった。
時にその強さが周囲を傷つけることもあった。
それでも僕にとっては良い母親だった。
そして彼女が言うことは正しかった。
僕は自分のことしか考えない、父と同じ狭量な男だった。
その想いがなおさら僕を故郷から足を遠ざける。
そしてなおさら祖母に心配をかけてしまう。
今思えば、僕の頑固な性格も、
思いこんだら一筋になる性格も、
全ては祖母から受け継いだものなのかもしれない。
血は繋がっていなくとも、僕は祖母の血を受け継いでいる。
それなら、彼女が持っている強い愛情も、強く人を信じる心も、
僕は受け継いでいるはずだ。
自分の殻を割ることさえできれば。
それさえできれば。
分かっているのに出来ないもどかしさ。
...それが僕の孤独感を加速する。
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