大学の授業で見ました。
スペインの詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカの死の真相に迫るサスペンス。
実際はロルカの死については謎であり、
本作はあくまでフィクションです。
しかしかなり面白かった。
面白かった、というよりは魂を揺さぶられた、という表現のほうが正しいかもしれない。
この映画を観る前にロルカの詩を中村先生が解説してくれたのですが、
どうも詩の良さ、というものがピンと来ない。
百聞は一見にしかず。
言葉の伝達能力は映像に比べるとその及ばざること山の如し。
しかし映像だけでは伝えきれないものがある。
言葉でしか伝えられない思いもある。
だからやっぱり言葉は必要で、そして詩人もやはり必要なのでしょう。
本編はロルカに関する知識がなくてもそれなりに楽しめますが、
やはりある程度あったほうがこの映画の良さは倍増すると思います。
物語は冒頭の「午後の五時」ではじまるナレーションに始まり、
最後のキーパーソンである闘牛士ガビーノは闘牛中に闘牛に突かれて命を落とす。
冒頭のナレーションはロルカの詩の「イグナシオ・サンチェス・メヒーアスへの哀悼歌」の
冒頭部分であり、メヒーアスは実在の人物で実際ロルカと親しかった人物で、
物語中のガビーノと同じく最期は闘牛中に闘牛に突かれて命を落とすのです。
フィクションといいながらも巧みにこうした事実が織り交ぜられているのです。
物語の舞台であるスペインでは1975年までフランコによる独裁政権が続き、
フランコ派により処刑されたとされるロルカについてスペインで口にすることは
タブーだったわけです。
この辺の事情を知らないとロルカの死の真相を探ろうとした主人公リカルドがなぜ
あんなにも危険な目に遭うのかもよく分からないでしょう。
危険な目に遭いながらも最期にたどりついた真実とは。
真実を知ったときのリカルドの絶叫が心を揺さぶる。
違う民族同士の争いでさえ悲惨なものをもたらすのに
同族同士で争わなければならなかったスペインの悲しみはいかほどだったのか。
...それがこの映画で伝えたかった主題ではないでしょうか。
ゴヤ、ダリ、ピカソ、ロルカと学んできて、ますますスペインに行きたくなりました。