早くも「沈まぬ太陽」がテレビ放映。
7年前に原作を読んだときはかなりの衝撃を受けた。
映画はこの濃い物語をよくぞ映像化した、と思うけど、
原作の濃さを考えると、やはり映画は原作のダイジェスト版、
という感があるのは否めない。
それでも言葉だけでは見えず、映像化することで見えてくるものもある。
映画で一番印象に残ったシーン。
主人公・恩地が会社の不正を暴くべく向かったニューヨーク。
束の間の休息で訪れたブロンクス動物園。
そこにかつての仲間であり、今は敵となったライバルの愛人が現れる。
もがけばもがくほど巨悪に染まってゆく男を助けてほしい、と懇願する女。
女が去った後、恩地がふと顔を上げた先に目に入った、
「世界でもっとも危険な動物」とは...
世界中のすべての動物園に置くべきだ。
この「世界でもっとも危険な動物」を。
ヒント1:
ギリシャ神話で、スフィンクスがオイディプスに投げかけたなぞなぞ。
「朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものは何か。」
ヒント2:
恩地が見たその檻は、実際には鏡に檻の枠を貼り付けたものだった。
...ここまで言っちゃえば答えは明白ですね。
この答えが分からない人間が世界を滅ぼす。
どんなに飼育員が愛情を持って接しても、
どんなにお金をかけて動物たちの住環境、食環境を整えても、
動物たちが幸せに暮らせる動物園など存在しない。
自分自身が動物園に入れられることを考えてみるといい。
そこで自分が幸せに暮らせると思えるだろうか?
動物園は人間の傲慢さを学ぶべき場所なのだ。
動物たちは自らの種が存続するための最低限の狩りしかしない。
しかし人間は自らのエゴを守るために、ほかの種ばかりか、
同じ種である人間をも殺してしまう。
地球は人間だけのものではない。
北方領土はロシアだけのものでもなければ日本だけのものでもない。
同様に尖閣諸島は日本だけのものでもなければ中国だけのものでもない。
どうして人間はなんでもかんでも占有したがるのか。
人間だけがエゴを越えて分かり合える幸せを知っているはずなのに。