「デザインによって水を示す」新しいかたちの実験となるでしょう。」
21_21 DESIGN SIGHTの第2回企画展、
佐藤卓ディレクションの「water」に行ってきました。
朝一番の開館とほぼ同時に入館したのですが、
しかしものの15分ほどで会場はけっこうな人数に。
それでもまあスペース的には余裕でゆっくり鑑賞することができました。
水を使ったデザインを見せるのではなく、
デザインで水の持つ特質、可能性、メッセージ性とかいったものを指し示す。
身近にあるがゆえに当たり前の存在として見過ごしがちだけど、
僕等は水の中から生まれてきて、水の中で暮らしている。
水なしでは僕等は生きられないのです。
身体に刻み込まれている水の記憶を思い出し、
限りある水資源について真剣に考えよう。
...というのが本企画展の趣旨。
例によって会場内は撮影禁止なのでテキストのみでのレビューになります。
展示数は35点。
その中から面白かったものをピックアップ。
(番号は展示品につけられる展示番号)
3.水円
天井から床に投影された水面の画像に足を踏み入れると
センサーが反応して水面がゆれ、水音が聞こえてくる。
水に囲まれ、水音を聞くと安心するのは僕らの身体に
水の記憶が刻み込まれているからだろうか...
6.「飲水思源」~蛇口のセンスウェア
トイレの洗面所の蛇口に手をかざすとセンサーが反応して、
水が出るのですがそれと同時にかざした手の辺りがライトアップされて
映像が流れるのです。
面白い仕掛けですが面白いがゆえに無駄に手をかざして水を無駄遣いしてしまう。
エコ的に考えればちょっと疑問に思ってしまった。
7.HOH(ホッ)
1つの部屋を丸々使った水のインスタレーション。
部屋全体を暗くし、天井には多数のLEDが設置してあって、
あるリズムパターンで白や青のLEDが点灯する。
前方と床の一部に水を想起するようなイメージがプロジェクターで投影、
スピーカからさまざまな水音が聞こえてくる。
コンセプト的には3.と似ていて水に囲まれることで妙な安心感を感じる。
8.見えない水の発券機
牛丼1杯作るのに必要な水は...
全ての原材料の誕生から考えればなんと2000リットル。
このほか味噌汁、ビール、ハンバーガーなどさまざまな食べ物で
その食べ物を作るのに必要な水の量が発券機のボタンを押すことで
発券される紙で知ることができます。
いかに僕らが水をたくさん使っているかを再認識することができるのですが、
ただそのことを再認識させるためにこれだけの紙を使う必要があるのか、
とエコ的に考えると6.同様疑問に思ってしまいました。
9.~20.水の器
直径1m、深さ70cmほどのボール状の入れ物が12個。
中は水で満たしてあって、底には丸いディスプレイで、
12個それぞれのテーマの映像が映し出されています。
井戸の底を覗き込むような感じで眺める姿勢はなんだかワクワクします。
この展示のせいで会場内はちょっとプールくさいのだけど、
それもまたなんか懐かしい。
21.ふるまい
棒の上に皿を置いて皿を回す皿回しのようなものが12点設置。
皿は超撥水加工がしてあってこの皿の上にスポイトで水を垂らすと、
強い表面張力で水滴は球状となり、その動きが面白い。
12個それぞれの皿の中は違った形状の突起がつけられており、
それぞれの皿で違った水の"ふるまい"を見ることができます。
22.鹿威し(ししおどし)
原研哉によるハイセンスな鹿威し。
鹿威しにより落下した水が21.と同じ超撥水の素材でできた坂の上を
水滴となって落ちて流れていく様がなんともいえない美しさを醸しだしてます。
33.体水計
自分の身体の中にある水の量を測るはかり。
若者用、中年用、壮年用と3つのはかりが置いてあります。
同じ体重でも年齢のよって体内の水の量は違うからだとか。
歳をとるほど体内の水分量は減っていく。
だから年寄りは肌がかさかさになるんですね。
生まれるときは水100%。死に向かって失われていく水分。
水を懐かしむ心情の原因がここにもある気がしました。
34.かぱ
どこに展示してあるかが秘密になってます。
会場を3周して探しましたがついに見つけられず。
くやし~。
34.以外の展示をだいたい1時間ほどでみて、
34.の展示場所探し30分。
鑑賞時間のトータルは1時間半ほど。
最後にショップでカタログを買おうとしたのですが
チョコレート展のときと同じくまだ完成しておらず。(12月発売予定)
代わりにチョコレート展のカタログがあったのでそれを買いました。
そのほか21.の展示の超撥水皿が売ってて心惹かれたのですが
たぶんすぐ飽きるだろうと思いとどまりやめときました。
デザインで記憶を喚起する、というある意味とても斬新な展示会でした。
デザインでこういうこともできるんだな、とあらためてデザインの可能性を見た気がします。
年明けて1月中旬までやってるので興味のある方はぜひ。
続いて新宿はオペラシティで開催している「北欧モダン」へ。