大学の同級生に横浜美術館でシュルレアリスムの展示をやっている、
との情報を聞きつけ調べてみるとなんと12/9が最終日。
フェルメール展を見に行く予定を急遽変更し、横浜美術館へ向かいました。
シュルレアリスムは大学の授業で学び、
本も何冊か読み(現在はダリの自伝を苦読中...;;)、
エゴがたぶん人一倍強い自分には非常に興味のある分野の一つ。
...というわけで興味津々で本展に臨んだわけですが。
[マグリット『大家族』が印刷されたブルーのチケット]
チケットは大学生で700円。
横浜美術館では現在メルマガサービス「横浜美術館ウェブ・スペシャル」に登録して
その登録画面をプリントアウトし、企画展鑑賞券を買うときに提示すると
先着3000名に特製エコバッグがもらえるキャンペーンを実施中。
...というわけでエコバッグゲット。
横浜美術館は東京の主要美術館に比べるとそんなに規模は大きくなく、
小さめの展示室が複数ある、といった感じ。
それまで写真や映像でしか見たことがなかった作品を生で見れるのはやっぱりいい。
展示品のほとんどが日本で所蔵しているもので、
日本にこんなにシュルレアリスム作品があったのかとびっくりです。
絵画を中心としてオブジェや彫刻、写真など数多くのシュルレアリスムの作品が
展示されてました。
本展はやはりシュルレアリスムについていくぶんか予備知識があると
その面白みが倍増すると思います。
展示の流れに沿って自分が気に入った作品をピックアップしていきます。
会場は撮影禁止なので、ネットから拾ってきました。
第Ⅰ章 シュルレアリスム美術の胎動
[マルセル・デュシャン「L.H.O.O.Q」(1919年)]
「なんでここにモナリザがあるんだ?」...って知らない人は思うんじゃないかな。
よく見ると、モナリザのプリントにひげを落書きしたものだということに気づく。
ローズ・セラヴィがマルセル・デュシャンが女装したときの名前、ということを知らなければ
この写真の面白さも伝わってこないよね。
シュルレアリスムでよく使われた技法のコラージュやフロッタージュ、デカルコマニー
もこの目で見ることができて感激。
棘の付いたアイロンがプレゼントなんて、ちょっと怖いよね。
[マン・レイ「不滅のオブジェ」(1923年、1965年再制作)]
延々となり続けるメトロノームに取りつけられた瞳。
「不滅」というキーワードも何となく頷ける。
写真コーナーではマン・レイによるシュルレアリストのメンバーの写真が
展示されてたのも面白かった。
第Ⅱ章 シュルレアリスムが開くイメージ
[マックス・エルンスト「王妃とチェスをする王(1944年、1954年鋳造)]
授業で習って知っていたシュルレアリストを挙げると、
マックス・エルンスト、サルヴァドール・ダリ、イヴ・タンギー、ルネ・マグリット、
マン・レイ、アンドレ・ブルトン、ポール・デルヴォー、ジョルジオ・デ・キリコ、
ホアン・ミロ、メレット・オッペンハイム、ロベルト・マッタ...
あたりでしょうか。
自分の好きな作品は、エルンストは「雨後のヨーロッパ」「セレベスの象」、
ダリではフロイトに尊敬の証として見せたという「ナルシスの変貌」、
オッペンハイムの「毛で覆われたティーカップ」...などですが
これらは残念ながら会場には展示されてませんでした。
授業でけっこうシュルレアリスムの作品は見たのですが、
それでもはじめてみる作品がたくさんあり、
シュルレアリスムの作品の多さを改めて感じました。
シュルレアリスムはけして幻想の世界を描いたものではなく、
あくまでエゴを通して見える現実世界を描いたもの。
シュルレアリスムの作品の多さはそれはとりもなおさず人間のエゴの多さ、
人の多様性を証明しているのだと思うのです。
まさに「十人十色」を証明するもの。
コーナー最後でシュルレアリスムに影響を受けた現代作家たちの作品が
紹介されてました。
第Ⅲ章 シュルレアリスム出現以後の様々なイメージ
奈良美智ややなぎみわ、草間弥生などの作品が展示されてました。
その中で印象に残ったのが高松次郎の「赤ん坊の影」。
タイトルのとおり赤ん坊の影を描いたものですがこれがすごくリアルで、
照明の加減で本物の影と見分けが付かないくらいなのです。
本展と併設して横浜美術館の所蔵作品の展示もしていて、
ここにもけっこうシュルレアリスム作品がありました。
ほかにもイサム・ノグチの彫刻作品などもあって、
けっこうレベルの高い作品を所蔵しているようです。
1時間半ほどで全展示を見終えてすっかり満足し、迷わず図録を購入。
2000円なり。
表紙の3つのQRコードは、シュルレアリストたちの格言が仕込まれてました。
「親愛なる想像力よ、お前のいちばんすばらしいところ、それはけっして容赦しないという点だ。」アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言』
「超現実主義と呼ばれる悪徳は、イマージュという麻酔剤を放埒に、情欲的に用いること・・・」ルイ・アラゴン『パリの農夫』
「イマージュは精神の純粋な創造物である。」ピエール・ルヴェルディ『イマージュ論』
最後にミュージアムショップを回ったのですがけっこう大きくて、
面白いものがたくさん置いてあって見るだけでも飽きないです。
けっこういい、この美術館。
...というわけでとても大満足の展覧会でした~