消えた巨木

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僕の住むアパートの前に大きな巨木がそびえ立っていた。
今のアパートに住むにあたり気に入ったポイントの1つだった。

巨木は心の中に暗闇のように広がる樹海に差し込んでくる、
一筋の光のような気がしていた。
家の外を出てこの大木のそばを歩きながら眺めるたびに
心の「芯」を見ているような気がして、なんとなく癒されていた。


ところが。
今日ふといつものように見上げると。
...いつもはあるはずの大木がなかった。


消えた大木。
僕はなにかを失った気がした。
...なにを失ったのだろう。

なんらかの理由で切り倒されたのでしょう。
でもあんな立派な大樹がなぜ切り倒さなければならなかったのだろう...
無神経な人間のエゴがまた働いたのだろうか。


下を見れば無機質な黒いアスファルト。
上を見れば無機質な灰色のコンクリート。
こんなところでどうやって鋭い感性が磨けるというのだろう。
心の中まで黒や灰色の味気ないものになってしまう。


東京は「学ぶ」場所であって、「磨く」場所ではない気がする。