「お寺とミュージアム」がテーマの今回の遠出、
広島県福山市の神勝寺に続いて、尾道市のしまなみ海道上の島・生口島の耕三寺にやってきました。
耕三寺は大阪で事業を営んでいた金本福松（後の耕三寺耕三）が1927年（昭和2年）に、
母のために故郷に隠居所（潮聲閣）を建てたのが元々のはじまりで、
母親の死後の1935年（昭和10年）、母への報恩感謝の意を込めて自ら僧籍に入り、
菩提寺として生涯を掛けて建立した浄土真宗本願寺派の寺院です。
周囲に何もない瀬戸田の土地に誇れる文化を、という熱意も相まって、
境内には日本各地の古建築を模した１５棟の国登録有形文化財の建物に加えて、
仏像・書画・茶道具などの美術コレクションを境内の僧宝蔵と法宝蔵及び分館・金剛館に展示、
さらに本堂の地下には仏教の地獄観・極楽浄土観を表現した千仏洞、
本堂の奥にはイタリアで活躍する日本人彫刻家・杭谷一東氏による彫刻庭園「未来心の丘」など、
境内全体を博物館施設とした「耕三寺博物館」となっています。
隣に平山郁夫美術館があることもあり、何度となくこのお寺の前を通っていたのですが、
華美な装飾の門構えになんとなく薄っぺらさを感じてしまい入るのを躊躇していたのですが、
神勝寺での興奮を勢いにようやく今回中に入ってみたのですが．．．
門の前で感じていた「薄っぺらさ」は微塵もなく、
まったくの自分の偏見であり、感じていたのは自分の薄っぺらさだった。
その内部は濃密な魅力の詰まった空間でした。
模倣そのものは悪ではない。
創造の過程においてその起源は模倣からはじまるのだから。
何もないところから何か生まれたりはしないのだから。
模倣を繰り返すことで表現者独自のクセとでもいうものが加わることで、
新たな表現が生まれてくる。
新しい創造とはそういうものではないだろうか。
山門。
閉じた状態。
開いた状態。
京都御所紫宸殿の御門が原型。
京都御所の方は木造だけれど、こちらは鋼鉄製。
国登録有形文化財。
中門。
奈良法隆寺西院伽藍（楼門）が原型。
左右で見守る守り神。
羅漢堂。
同じく法隆寺西院の伽藍回廊を原型とするもの。
国登録有形文化財。
立体的な絵画が面白い。
こちらの守り神は仁王様。
礼拝堂。
京都の国宝清水寺西が原型。
ここで入場券確認がされるので、山門、中門、羅漢堂は無料で見れる、ということなのかな。
（確認はしておりません）
裏側には「世の母はみな観世音花の春」とあります。
このお寺はお母さんに感謝を捧げる「母の寺」なのです。
彩色・装飾のいっさいは耕三寺独自のものだそうです。
独特な手水場。
中段からの眺め。
潮聲閣（ちょうせいかく）。
開山耕三師が昭和初期に母親のために建てた別邸。
いわば耕三寺の起源とでもいうべき場所でしょうか。
洋館と日本式の邸宅が一体となった和洋複合形の住宅で、
銘木がふんだんに使われた豪華な造りとなってます。
庭園。
大広間
床柱は紫檀、床框は黒檀、床板は欅の研ぎ出しの一枚板、天井板は屋久杉という贅沢さ。
縁側。
額絵のセンスもなかなか。
老人室。
母親の居間。
客間よりも立派に作られており、いかに耕三師が母親を慈しんでいたかが伺える部屋です。
床柱と建具は黒柿、床の間の落としがきは鉄刀木、欄間は薩摩杉が使われています。
御母堂の木像。
襖絵。
帝展作家・川上拙以画伯によるもの。
百二十四面の花鳥画が描かれた折上格天井。
同じく帝展作家・山下薫画伯によるもの。
梅とセキレイが立体的に彫られた欄間。
老人室と応接室・化粧室の間の中庭。
見事な鶴の絵。
オウムのランプ。
浴室
大理石と御影石で作られた四畳半ほどの浴室。
浴槽の内画は桐の木を使用。
浴室と廊下の間の円形のステンドグラス窓。
化粧室
いわゆる脱衣所だそうですが、こんなに豪華なんですね．．．
洋館部分は応接室となっています。
西正面にガラス戸の玄関を設け、月光門から表玄関を通らず直接入ることができます。
内部は中国清朝時代の家具が配置されています。
月光門。
センスの良い調度品でいっぱいです。
宝船。
暖炉。
石時計。
仏頭像。
洋館部分は二階建てなので外からよく見えます。
二階部分は非公開。
洋館奥にあるのは文庫らしいですがこちらも非公開。
続いて中上段部分へ。
【Information】オフィシャルサイト
アクセス：しまなみ海道生口島南IC・生口島北ICよりそれぞれ車で13分
開館時間：9:00〜17:00（潮聲閣は10:00〜16:00）
休館日：年中無休
入館料：大人1400円、大学生1000円、高校生800円、65歳以上1200円、中学生以下無料
※潮聲閣は別途入館料200円が必要（大人・子供とも）
※注意！：本来は仏に祈りを捧げる神聖な場所です。
宗教に対する真摯な気持ちを持ち、節度ある行動を心がけましょう。