361°

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nendo_office.jpg
[nendo office(オフィシャルサイトより)]


毎週水曜日はアイデンティティ・デザインの授業。
今週は特別講演でつぶれたけど。

3D志向の自分としては数少ないVD(Visual Design)系の授業なのですが、
好きな授業の一つです。

授業の出欠は通常授業中に配られる出欠カードの提出により行われるのですが、
この授業では授業の感想の提出が出欠になります。
学生の意見を積極的に聞こうとする先生の姿勢も好きだし、
毎回素晴らしいデザイナーを紹介してくれるのも嬉しい。
なにより「アイデンティティ」という「らしさ」を考えるデザインって面白い。


先週の授業はとくに素晴らしかった。

冒頭でnendoの新しいブランド「361°(イチド)」が紹介されました。

nendoは元々大好きなデザイナーです。

通常デザイナーはクライアントから依頼を受けてデザインを行います。
しかしこの新しいブランドはまずnendo自身がアイデアを考え、
そのアイデアを実現するのに最適なメーカーを探してきて、
そのメーカーに提案する、というこれまでとは真逆のビジネス方法。

まあこれまでにも同じようなことを考えた人はいたような気はしますが、
ここまできちんとブランド化して推進しているところはない気がする。

そのビジネスプランも素晴らしいのですが、
もっと感動したのがブランド名の付け方。

ぐるりと一周(360°)見回した後、1°だけ変化を与える。
過去の履歴や、現状の他者の状況など周囲をじっくり観察した上で
少しだけ自分たちのオリジナルを加える。
...なんとも素敵なネーミングじゃないですか。

いきなり大きなインパクトを与えることではなく、
少しだけ、1°だけ、というところがまたニクイ。
謙虚でありながら積極的でもある。
両者を兼ね備えることで「確実な」という好感をユーザーに与える。

...素晴らしい。
あらためて惚れ直しました。


久々にnendoのサイトを訪れたら。

361°のほかにも、「1%(ワンパーセント)」というブランドも
ディレクションしてるじゃないですか。

こちらのコンセプトは、


  1つしか作られない「アートピース」ではない。
  何万個も作られる「量産品」でもない。
  プロダクトがこの世に存在する、ちょうどいい数。

  100個だからできること。
  100個じゃなきゃできないこと。

  1%の所有することの喜びを感じてもらうために

  100個限定生産プロジェクト
  「one percent products(ワンパーセント・プロダクツ)」
  (オフィシャルサイトより)


...うーん、こちらも素晴らしい。
361°と同じくまだラインナップが少ないですが、この先の展開が楽しみです。


後半はアップル社のお話。

創業者スティーヴ・ジョブスのプレゼンの秘訣。


  「やったことだけを伝えることだ。」


短い言葉の中に本質が潜んでいる。

もしプレゼンが上手くいかないのならば、それはやってないからだ。
十分やり尽くしていないからだ。

プレゼンで上手く喋るコツなど必要ない。
やることを充分やっていれば、たくさんやっていれば、
それを素直に話さえすれば相手には伝わるのだ。

やっていないことを上手く喋ろうとするから、
プレゼンは難しい、ということになってしまう。


結局は事前の検討を膨大にやれ、ということなんだけどね。
質より量ってことなんだけどね。

このシンプルで自明な本質を誰もが忘れている。

真の天才とはセンスの良さとかじゃなく、
同じことをひたすら黙々と繰り返すことができる「努力の天才」をいうんだろうね。
ジョブス然り、イチロー然り。


いやー、良い授業だ。