ゾラの生涯

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大学の授業で鑑賞。
久々に感動。

ゾラの生涯、とありますが内容的にはドレフュス事件がメインになっているのでしょうか。

セザンヌとのパリでの貧しい共同生活からはじまり、
「ナナ」で一躍有名になり、成功した小説家エミール・ゾラ。
かつてのハングリー精神や熱い情熱も薄れ、余生を静かに過ごすゾラの元に
無実の罪で投獄された軍人ドレフュスの妻が助けを求めに訪れる...

これまでの名声を失いかねない危険から最初はドレフュス事件を敬遠していた
ゾラだが、かつての盟友セザンヌの姿をまぶたの裏に浮かべたとき、
何が正しい道なのか、を悟る...


ドレフュス事件は歴史の授業で習ってその名前だけは知っていたけれど、
実際どのような事件だったかは全然知らなかった。
一部フィクションも交えているようですが、
ドレフュス事件を知るには最適な作品だと思います。


都会に残ったゾラと、田舎に去ったセザンヌ。

...人の生き方の大きな選択がここにある。

「ふくらんだ腹と共に才能に贅肉がつく」


成功したゾラの元からセザンヌが去るときにゾラに言った台詞。
芸術家は貧しくあるべきだとセザンヌは言う。

満たされてしまうと人は前進しなくなる。
満たされた状態に浸っているとそれが当たり前に感じるようになる。
その意味では芸術家に限らず、人は誰しも貧しくあるべきなのかもしれない。

生きものはみな、最低限で生きている。
それは限りある自然の遺産の中でできるだけ長く生きながらえようとする
生物の本能だと思う。

「より良く生きる」ことを目指すのは本当に素晴らしいことだと思う。
それが人間における「生きがい」なのだと思う。

しかしそれでも「最低限で生きる」という自然界のルールは守るべきだと思う。
そのルールを守らなければ、他の生きものたちはもちろん、
人間自身もやがては自ら滅ぼして行くことになると思うから。


都会は刺激的だ。
ものにあふれ、情報があふれ、エネルギーにあふれている。
「生きがい」を見つけるにはまず都会に行けばいい。

しかしその「生きがい」が見つかったならば、
人は都会を去るべきではないのか?
都会でなければ実現できない「生きがい」は本当に「生きがい」なのか?

何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。
過剰なエネルギーは歪みを生む。


ゾラは立派だと思う。
でもパリを去ったセザンヌに僕は共感する。

そしていつの日か、僕も遅い学びの過程を終えたら都会を離れる。