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2011年3月21日

世界平和記念聖堂・外観編【村野藤吾|広島県広島市】

建築デザイン

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...而してこの聖堂によりて恒に伝へられるべきものは、虚偽に非ずして真実、権力に非ずして正義、憎悪に非ずして慈愛、即ち人類に平和をもたらす神への道たるべし。故にこの聖堂に来り拝するすべての人々は、逝ける犠牲者の永遠の安息と人類相互の恒久の平安とのために祈られんことを。(聖堂記 昭和29年8月6日)

内観編


広島は世界ではじめて核兵器で爆撃された街である。

広島は戦争の悲惨さを知り、平和の尊さを知る街である。
広島を故郷とする人間はそのことを誇りに思っている。

僕もそんな広島県人の一人である。


広島には世界平和を願うための施設が二つある。

丹下健三が設計した平和記念公園ともう一つが今回紹介する、世界平和記念聖堂。
設計は村野藤吾氏。
完成は平和記念公園とほぼ同時期の1954年。
平和記念公園と同じく、原爆という悲惨な経験を繰り返さぬよう、
世界平和を願って建てられた教会。

...恥ずかしながら、二十歳まで地元にいたときはこの教会の存在を知らなかった。
当時は仏教以外の宗教に触れる機会がまったくなかった。
当時実家が喫茶店を市内で営んでいて、
小中学生の頃はよく通ってたけれど、実はこの教会の近くだった。
灯台下暗し。

建築に興味を持つようになったここ数年でここの存在を知ったわけですが、
村野藤吾氏の建築が大好きで、ずっと訪れたい、と思ってました。
念願かなってようやく。


...思った以上に良かった。
丹下さんの東京カテドラルに勝るとも劣らない魅力を感じた。


信じることは力を生む。
信じる力が集まって宗教が生まれる。
それは絶大な力となる一方で、信じないものたちを排斥しようという力も生まれる。
宗教は諸刃の剣である。

この教会はそんな宗教の垣根さえも越えようとするものだ。
平和はすべての垣根を越える。
そういうものではないだろうか。



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この教会の良いところは、真にオープンなところだと思う。

夢中になって内部を撮影していると、
教会のガイドらしき方が通りかかって、良かったら案内しますよ、とのこと。
通常は事前に連絡をとって見学ツアーが組まれるみたいですが、
そのことをぜんぜん知らなくて、偶然このガイドの人に出会えた。

美術館の音声ガイドの類は使わないほうですが、
今回はガイドしてもらって本当に良かったと思う。
単独だと入れない場所へも連れていってもらえたし、
なによりガイドの方が昔、建築の仕事をされていたそうで、
熱心にこの建物について研究されていて、
村野氏の意思を多くの人に伝えようという熱心な姿勢が、
なおさらこの建物の魅力を増している。

写真もお好きなだけどうぞ、という感じ。

教会自身が建物の建築的価値を自覚している証拠ですね。
良い建物を存続させていく上で大切なことですよね。

そう考えると、東京カテドラルの姿勢は少し残念なように感じます。


おかげで、外も中も写真を撮りまくった。
よって外観編と内観編に分けます。

※注意※
以下の解説は主にガイドさんの解説、教会内の説明を元にしていますが、
あくまで僕の理解・解釈の範囲内でするものであり、主観的なものです。
正確な情報を提供、保証するものではありません。
おおよその情報、といった程度で受け止めていただければと思います。


まずは外観編。

ファサード。
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エントランス。
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エントランスから外を眺める。
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キリスト教でありながら、鳥居があり、太鼓橋といった仏教要素が垣間見える。
宗教の垣根を越えようという建築家の意図がここに見える。


小聖堂。
写真で見たときからお気に入りの場所だった。

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実物もやっぱり良い。
円筒形の外壁に合わせて、レンガも緩やかにカーブしています。
窓枠さえもカーブさせるというこだわり。
そのこだわりが造形全体の雰囲気に表れている気がする。

雨樋も通常は建物から距離をとって、水が壁を伝って傷めるのを防ぐのだけど、
あえて短くして屋根の緑青が壁になじむようにしたとか。


鐘楼。
shks_tower.jpg

建物の随所には遠近感を出すために遠くに行くほどに狭くなる、
という工夫がされているわけですが、
鐘楼でも高くなるほどに幅がわずかながら狭くなっています。
その差異がわずかであっても、
コンクリートの型枠は都度変えていかなければならず、
大変な手間がかかっているわけです。

鐘楼の中にも入れてもらえました。
村野さんは下から上まで吹き抜けにしたかったそうですが、
壁の厚さをできるだけ薄くしたまま強度を保つために、
途中で一枚床板が入れられてます。


側面壁。
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重厚感あふれる壁が存在感を増す。


日本には珍しいゴシックのフライングバットレス。
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薄い壁で大開口にして多くの光を取り入れると、必然的に強度が弱くなる。
フライングバットレスは強度を補うための構造物。
この規則的なリズムが心地よさを生む。


天蓋頂上の鳳凰。
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どこからでも見えるわけではなく、敷地内のある地点からだけ見えます。
その地点には矢印でマークがつけられているのだけど、
やはり説明されなければ気づかないもんだね。


外壁面にも村野氏のこだわりが見える。
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レンガブロックの上部を荒く盛り、下部を丁寧に仕上げる。
こうすることで雨が壁面を伝うときにレンガ同士の継ぎ目を流れるようになって、
側面をできるだけ濡らさず、建物を護るための工夫がされています。

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とはいっても、昔からの日本の伝統職人は仕上げの丁寧さがピカイチであることが自慢。
当初は「粗く仕上げる」ということに理解を得るのが大変で、
現場の職人さんとは衝突が絶えなかったであろうと予想されます。

場所によっては仕上げの荒さにばらつきが見られます。
とくに粗さが目立つ部分は、村野さん自身によるお手本ではないかと。
大げさにやってみて、これくらいでいいんだよ、と。


窓。
shks_window.jpg

防護網が織り込まれたガラスがはめ込まれているわけですが、
初期と後期で網目模様が微妙に異なっています。
上段が初期のもので六角形、下が後期のもので菱型となってます。


窓の形にもボーダレスが織り込まれてます。
松竹梅という日本の伝統造形が取り入れられてます。

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[松・竹]

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[梅]

それでもきちんと調和しているのがスゴイ。


雨樋の「逃がし」
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基本的に方形の聖堂ですが、すべて角張るのではなく、
要所要所でラウンドカーブを取り入れることで、柔らかさを表現している。


聖堂隣に併設されている広島カトリック会館。
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犬。...敷地内は犬の散歩禁止だけど。
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マリア像。「広島の聖母・平和の元后」
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この建物は村野さんの前期の建築であり、
建物随所には村野さんの試行錯誤の跡が見られます。
角の面取りだったり、壁の仕上げだったり。
基本的に方形の造形ですが、小聖堂や窓、端部の仕上げなど、
「箱」からの脱却への試みが随所に感じられる。

その試みがやがては晩年の谷村美術館、八ヶ岳美術館などの有機性へと
昇華していくのか。

細かいところでの迷い、試行錯誤があっても、
全体としての統一感が失われていないところが村野さんの非凡たるところなのだろうか。


平和記念公園はどちらかといえば、
建築的魅力よりはランドスケープとしての魅力があるのに対し、
こちらは真に建築的魅力にあふれている。

この建物が持つ「世界平和祈願」という強い機能に対して、
建築がその機能に負けないで、しっかりとその機能を表現している。


いやー、素晴らしい。
日本が世界に誇れる教会であり、建築だと思います。

...続いて内観編へ。


【information】

アクセス:広島駅から「宮島口」行きに乗車し、「銀山町」下車、徒歩5分。幟町小学校前。
入場無料、ただし宗教行事等により入場できない日や時間帯あり。


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