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2008年11月16日

磯崎新の建築談義 #12 【クライスラー・ビル[20世紀]】

建築 / ファッション / 書籍

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磯崎新の建築談議シリーズ。
今回は最終巻、第12巻のクライスラー・ビル。
20世紀を代表する建物としてこのビルを取り上げてます。

20世紀といえば3巨匠(ライト、ミース、コルビジェ)をはじめとして、
アアルト、ニーマイヤー、丹下健三、安藤忠雄など
モダニズムやポストモダンの巨匠などが候補として考えられると思うのですが、
建物がNYを象徴するものとはいえ、なぜウィリアム・ヴァン・アレンという
クライスラー・ビル以外これといった作品のない建築家の作品が
ピックアップされたのか?

しかも様式はモダニズムでもポストモダンでもなく、アール・デコ。

まあ磯崎氏独特のアイロニーも込められているのでしょうが、
20世紀の建築の1つの転換点としてピックアップし、
20世紀の建築全体の方向性を俯瞰しようとするものでもあるみたいです。


建築の持つ機能とは、含有する内部空間においてのみ存在するのか?
あるいは他に機能が存在するとすれば、
それらの機能よりも内部空間の機能が最優先されるべき機能なのか?


20世紀の建築は外部と内部のせめぎ合い。
...そんなところでしょうか。


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[アール・デコ色が強く残るビルの尖塔部分]


クライスラー・ビルが建った1930年、この年にアール・デコは終わった。

翌年のエンパイア・ステートビル、1939年のロックフェラーセンターも
基本的にはアール・デコと言われているけれど、アール・デコの特色は薄まり、
近代色の強いものになっています。

アール・デコとしての最大の魅力を残した建物、それがクライスラー・ビルなのです。

1932年にMoMAで開催された「近代建築」展のフィリップ・ジョンソンによるカタログ
により「インターナショナル・スタイル(国際様式)」という言葉が登場し、
アール・デコは批判されて衰退し、やがて機能最優先のモダニズムが展開してゆく。

しかしそのジョンソンも1980年代には、
モダニズムを批判するポストモダニズムへと転換する。

...まさに歴史は繰り返す、です。


どの様式が正しいか、という議論はナンセンスなのかもしれない。
どちらかに偏れば、いつかはその方よりの対極にあるものを目指す。
人間は生物本能的には安定を求めるけれど、
理性趣向的には変化を好むいきものでもある。

多くの人々が求める趣向がすなわち時代の流れであり、
その流れに逆らわずに乗れる人が成功を掴むのであり、
あくまで自分の個性のこだわる人が流れに逆らい苦労する人なんだろう。

経済的に成功したければ前者となるのが手っ取り早いだろうし、
自己の表現にこだわる人の多くは後者のようになるだろう。


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[直線性の中にも残る装飾部]


クライスラー・ビルが建った1930年当時、
高さ319mのこのビルは世界一の高さを誇るものだった。

しかしその1年後、エンパイア・ステートビルが建って、
あっさりと世界一の座を明け渡す。
そのエンパイア・ステートビルとて同じことでその後のビルに後塵を喫する。

クライスラー・ビルが今なお美しくあるのは、
「世界一」というはかなく、くだらない個性だけではなく、
アール・デコが持っていた本質的な美を備えていたからなのでしょう。

機能というものは見えず、絶えず変化するものだと思う。
そこを基底とした様式というものも見えず、
安定することのない様式なのかもしれない。

だからモダニズムやポストモダニズムは見えにくく、分かりにくい。
結局無装飾でシンプルで近代的であれば皆モダニズムで、
それにちょっと反発して装飾が少し入ったものがポストモダニズム、
という程度のものにしかなり得ないんじゃないだろうか。

様式というものはある程度広い範囲で共通化されるということ。
過去の様式が研究し尽くされ、「個」の時代となりつつある
現代の情報化社会においてはもはや「様式」が
構成されることはないのかもしれない。

あるいはいつの時代も混沌の時代はあって、
やがて新しい様式が構成されてゆくのか。

「特定の特徴がない」ということ自体がただ1つの特徴で1つの様式と呼ぶべきか。

...今の僕には上手く整理ができない。


ただ確かに感じることは、「Form Follows Function」という言葉は
もはや20世紀の遺物だということ。
その言葉そのものを否定する気はないけれど、それだけでは不十分だということ。
それだけでは窮屈である、ということ。

本質的な美を見出し、形にすること。
そういった形は人々の心を打つ。
そして建物の外観にもそういう形が必要だと思う。
内部空間と同じくらいに。

人体の内部である内臓とそれらの皮膚を包む皮膚とどちらが大切か、なんて
議論がナンセンスなように建築の外観と内部空間のどちらが大事、なんて
議論もナンセンスなのかもしれない。

要は外部と内部の関係性をいかに上手く表現できるか。
これに尽きるのかな。


さて、この建築談議シリーズもこの辺で終わりにしようかな、と。
難解な文章を読み続けるのはストレスが溜まる^^;

ニューヨークに建つビルだけに本書では
レム・コールハースの「錯乱のニューヨーク」が多く引用されてました。

というわけで、次はこの「錯乱のニューヨーク」を読みたいと思います。

...実はもう読みはじめているのですが、冒頭を少し読んだ限りでは、
磯崎氏に匹敵するくらい難解な文章のようです。しかも分厚い。


うーん...

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About Me

Author: ただおー
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工業高専電気工学科卒業後、某大手電機メーカーでエンジニアとして14年間勤務。 退職後、多摩美術大学造形表現学部(上野毛キャンパス)デザイン学科に入学、 SC(スペースコミュニケーション)コースで空間デザインを学ぶ社会人美大生。 今一番興味あるのは建築。意匠と構造が有機的に融合した建築を実現するのが夢。 デザイナーでも、エンジニアでもない、しかしその双方を含むアーキテクトを目指します!

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